今回は私が敬愛する喫茶店愛好家・沼田元氣さんの本をご紹介します。
『ぼくの伯父さんの喫茶店学入門』(2001)
「喫茶店学」は「カフェロジィ」と読みます。
「喫茶店学」といっても、喫茶店を経営するための教科書ではなく、沼田さんならではの「喫茶店の楽しみ方」を教えてくれる本。
実際に1999年から2002年までの間に池袋で開催された「初心者のための喫茶店学入門講座」での内容を加筆訂正したものだそうです。
あぁ行ってみたかった…
遊び心溢れる紳士・沼田元氣さんについて
表向きの肩書は写真家であり詩人。弟子には『未来ちゃん』で有名な写真家の川島小鳥さんがいます。
しかし「写真家詩人」という肩書きだけでは言い表せない沼田さんの多彩な活動。
「憩イスト」(人々の心に憩いをもたらす土地(温泉地など)を紹介する)でもあり、ひとり歩きの会・会員でもあり、こけし好き。(専門誌「こけし時代」を作り、鎌倉にこけしとマトリョーシカのお店「コケーシカ」を作るほど。)
自由と未来的郷愁を愛し、遊び心溢れる紳士沼田元氣さん。
愛称はジャック・タチの『ぼくの伯父さん』から、「ヌマ伯父さん」なのでここでもヌマ伯父さんと呼ばせていただきます。
喫茶店への造詣も深く、東京喫茶店研究所・所長でもあるので、多くの喫茶本を手掛けていますが、こちらは喫茶店好きなら一家に一冊置いておきたい喫茶本です。
ちなみに東京喫茶店研究所・二代目所長は「純喫茶コレクション」の難波里奈さん!
いつも持ち歩いてるカフェカード
表紙をめくると、切り抜いて持ち歩ける「カフェトレーディングカード」が。
ヌマ伯父さんによると、喫茶店愛好家の紳士婦人や、憩趣味の少年少女たちが好きな喫茶店カードを交換しあい、情報交換するためのツールだそうです。
(表紙もカードになるのですが、切り取るには勇気がいります…)
私も一枚だけ切り抜いて、いつか喫茶店愛好家の方と交換できる時に備えて財布に入れて持ち歩いています。
喫茶人データ
喫茶店学オリエンテーションに入る前に、まずは履歴書のような「喫茶人データ」を書き込みます。
「もし将来お店を開くとしたらどんな喫茶店名か」
「本屋か、もしくは古本屋の帰り道、家に帰るよりもまず、手に入れた戦利品を眺めてみたいカフェのイメージは?」
「夕暮れ時、そのお店の選曲が好きで、ただ一人うっとりと音楽だけに耳を傾けていたいカフェのイメージは?」
などなど、喫茶店好きなら考えるだけで小一時間は余裕で過ぎてしまうような具体的な喫茶質問事項に答えていくと、自分だけの喫茶人データが出来上がり。
喫茶講座
自分の喫茶人データを書き終えたら、講座を受けるようにページをめくっていきましょう。
Lesson10まであり、どれも濃厚。多くは対談形式で綴られています。
市川実日子さんによる「カフェマヌカン論」も。
他にも
エリック・ロメールと黒澤明の映画を通してカフェを再発見したり
喫茶店で感じたことを17文字に込めてカフェ俳句をつくってみたり
突然、喫茶人テストがだされたり
月刊『商店建築』編集部の方と喫茶店と建築の関係を考えてみたり、
時には自分で美味しい珈琲を淹れるためのページもあります。(まず初めは、美味しい珈琲をイメージするところから)
すこしづつページをめくりながら、じっくりと喫茶店・カフェへの考察を深めていきましょう。実際に好きな喫茶店に行って読んでみるのも臨場感あっていいですね。
すごく細かいことですが、この本のざらっとした紙の質が好きです。
それと、ところどころに喫茶店の写真が店名なしで掲載されています。それを見て、あ!行ったことのある喫茶店だ!と気づけたときはとっても嬉しくなりました。
さいごに
ヌマ伯父さんによる喫茶愛あふれる講座を受け終えた後、きっとあなたも今より深く喫茶店が大好きになるでしょう。
私はこの講座を受けて(本を読んで)、さらに喫茶店という存在が愛おしくなりました。
最後に、ヌマ伯父さんによる、カフェアフォリズム(迷言集またはさみしい時の口の運動)からお気に入りを。
カフェに入ってマッチがほしいというのはタバコがすいたいから。
カフェを出る時、マッチがほしいというのは、も一度ここへ来ますという合図である。○
ほとんどの物語は、すべて死で終わる。
しかしカフェのハナシは閉店しても終わらないだろう。
むしろ、その後、尾ひれがついて、伝説となることも少なくないのだ。
『ぼくの伯父さんの喫茶店学』詳細
【タイトル】ぼくの伯父さんの喫茶店学」
【著者】沼田 元気、 堀内 隆志
【単行本】127ページ
【出版社:】ブルースインターアクションズ
【出版年】2001年